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Channel: 映画収集狂
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松本清張原作特集

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6月の初旬から中旬にかけて、wowowで製作した「眼の壁」のオリジナル・ドラマ放映のタイミングに合わせて、松本清張原作の懐かしい映画12本を立て続けに放映していた。
そもそも最初に放送する映画、大曾根辰保監督1957年作品の「顔」が未見だったので、その「顔」を手始めに2週間にわたり、総数12本の映画を連日鑑賞し十分に堪能できた。
なお、12本の作品は、以下のとおり。

顏(1957)大曾根辰保監督
張込み(1958)野村芳太郎監督
黒い画集・あるサラリーマンの証言(1960)堀川弘通監督
ゼロの焦点(1961)野村芳太郎監督
影の車(1970)野村芳太郎監督
霧の旗(1977)西河克己監督
鬼畜(1978)野村芳太郎監督
わるいやつら(1980)野村芳太郎監督
疑惑(1982)野村芳太郎監督
彩り河(1984)三村晴彦監督
砂の器(1974)野村芳太郎監督
天城越え(1983)三村晴彦監督

12作品を通して見た感じでは、やはり「張込み」がダントツの出来だと思った。
なにしろ高峰秀子の抑えた演技が、薄幸の女の後半の激高を「さもありなん」と観客に納得させるに十分なものがある。
それに引き換え、岩下志麻の「影の車」にしろ、「鬼畜」にしろ、「疑惑」にしろ、いずれも不本意な演技だったのではないかという印象をもった。
とりわけ「鬼畜」など、納得できないまま表面的に演じねばならなかった最悪の役だったのではないか、ミスキャストとまではいわないけれど。
ミスキャストといえば、「黒い画集・あるサラリーマンの証言」の愛人役・原知佐子だろうか、あれではあまりにも「知的」すぎる。強姦されても、「だって、しょうがなかったのよ」とへらへら薄笑いを浮かべるくらいの微妙な演技力がほしいところだ。
「天城越え」の田中裕子の熱演が物凄く輝いていて、見ている最中は、この役を別の女優で見てみたいという誘惑までは抱かなかったのだが、邪気のない包容力のある女優(マリリンモンロータイプ)で演じて見たらどうだろうかという感じもした。

こうして松本清張原作の一連の映画を見ていると、清張が作品に込めようとした意図が、なんとなくわかってくる。下層社会にあって抑圧された者たちの屈辱と忍従の哀しみだろう。
そこで、いつも抱く疑問がある。
それならなぜ、清張の『或る「小倉日記」伝』が映画化されないのだろうか、と。
あらゆる意味で最適な映画的シチュエーションだと思うのだが。
検索したところ、1965年と1993年の2回、テレビドラマ化され、それなりの評価を得たらしい。
そりゃそうだろう、これだけの作品だ、映画化すれば必ずや評価を得られるに違いない。
日本には、まだまだ物凄い宝が眠っているのに、それを掘り起こすだけの力がないだけの話だ。


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